熊本県で油づくりをしている肥後製油さんの魂とも言える「初代 弁蔵」のパッケージをデザインさせていただいた。
味のある油「初代 弁蔵」のコピーは、コピーライターの堺谷さんが考えてくださったもの。
初めて耳にしたときから、満場一致で全員の心にストンと落ち着いたコピーだった。
そう、文字通り「味」のある油なのだ。
通常の量産品は無味無臭が一般的だが、弁蔵はそのまま口に含んでみるとふわりとした花の香りとコクが広がる。しかし一度調理に使えば、炒めはさらっと、揚げはかりっと、サラダなどの生食では食材の風味を引き立てる珠玉の一品となる。
ほぼ毎日使用する油。
「良い油は料理が美味しくなる」と知識として知りながら、安くて適当な油を使っていた自分を恥じた。
人は食べないと生きていけない。当たり前だ。だから毎日良いものを使えば、食事の質があがり、引いては人生が豊かになる。
私のようになかなか手を伸ばせないでいた人に、思い切ってこの「弁蔵」を試して欲しい。
きっと今までとは違った料理の出来に食事が楽しくなるはずだ。


現場に伺い、職人の皆さんのお話を聞けば聞くほど、今時信じられないほどの手間ひまをかけた油づくりと徹底した品質管理に平伏する思いだった。
国産の菜種だけを使い、低温でじっくりと焙煎することで、何よりも大事な風味が出来上がる。
化学溶剤を使えばほんの数時間ばかりで完成するが、それでは本当に安心安全で旨い油は作れない。
だから、三日三晩丁寧に丁寧に、何十もの工程を経て、黄金の一滴が溢れ落ちてくる。
その様子があまりにも美しく、パッケージのメインイメージとした。

一度は熊本の大地震による被害で廃業も考えたという肥後製油さん。
それでもここで終わってはいけないと心を一つに再出発した思いは計り知れない。
かつて一面の菜の花畑を前に初代「弁蔵」が夢見た、昔ながらの豊かな味わいを追い求めて、ようやく実現できたこの一滴を、熊本のイメージカラーとも言える赤と共に、肥後製油の情熱と共にどうか少しでも多くの食卓へ届きますように。
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photo / 小田崎 智裕さん
copy writing / 堺谷徹宏さん

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